製作風景

制作中の記録写真を、完成までの約1ヶ月間を通してブログ風に順次掲載します(2017.08.23~)

機関車本体完成後、「制作の記録」として部品別に制作工程をご紹介します。

福岡県筑後市に本社を置く九州ダンボール株式会社の事務所棟(右)と原紙倉庫(左)。

 

C62は、この原紙倉庫に設置した「工房」で制作しています。

段ボールシートを製造するコルゲーターという機械です。

 通常は全長100mぐらいありますが、九州ダンボール株式会社の機械は2階建て構造のため、60m程度です。

 

 

 コルゲーターから生み出されてくる、厚みや強度の異なる様々な段ボールシートがC62の原材料となります。

段ボールは、段ボールの古紙で出来ています。95%以上のリサイクル率です。資源回収に

ご協力してくださった皆様のおかげです。

 

製紙メーカーから運ばれてくる原紙は、一旦「原紙倉庫」に留め置かれます。九州ダンボール株式会社の原紙倉庫は、段ボール製造企業の中でも広大な面積を誇る広さで、「工房」はこの倉庫の一角をお借りして設営しました。

 

工房には、会社の関係者が毎日のように見学に訪れます。

修理中のD51の右横に垣間見えるのが、製作中のC62。

左がD51、右がC62。構造体の経時変化を見極めるため、組み上げてから2ヶ月間放置したままになっています。

 

6月末から8月末までの湿気の多い季節、膨張する部分と収縮する部分をチェックします。

 

D51は使用済みの段ボール箱を4000個集めて製作しましたが、C62は新品の段ボールシートを使っているため、湿度の変化には敏感です。作っては放置し、変化の具合を見ながら部材をつけ足していきます。

モーションプレートとスライドバー(滑り棒)を取り付けて、シリンダー棒との取り合いを調整。弁芯棒の中心線とモーションプレートの滑り子の位置が1mmの狂いがないことを確認したので、弁辛棒後蓋を取り付けてみることにしました(次写真)。

50%完成している弁辛棒後蓋。

弁辛棒クロスヘッドの挿入位置・高さを確認。取り付け・取り外しを数十回試みて、装着時の磨耗を起こしにくいことを確認。

機関車のあらゆる部品の中でも最も美しい曲線を構成しているモーションプレートの制作にあたり、段ボール加工の中でも、とくに難しい曲面加工技術を多用しています。実機の部位と同じ形態を保ち、なおかつ、自重および装着する多数の部品の重さに耐える構造を紙だけで作るわけですから、現物を採寸した外形をそのまま「真似」ても組み立てることはできません。構造計画に充分な時間を割き、「組立加工図」を何度も描きなおして、最後に「カット図面」を作成、データをCAD入力した後カッティングマシンで部材を切り取ります。(製作過程は機関車本体完成後に「制作の記録」としてまとめます。)

 

モーションプレートの全体姿写真。4つの部材で構成されています。組み立てやすいように、しかも、組み上げたときに部材同士が緊結できるような接合方法を設計しなければなりません。D51制作の経験が生かされました。

連結棒のスモールエンド。完成まであと少し。

車軸を支える従台車のボックス構造を薄い段ボールで構成することは至難でした。見た目は同じでも実物とは異なる構造になっています。実機と同じような構造に迫りつつ、紙素材の限界点を見極め、どこかの時点で折り合いをつけなければなりません。そのためには、強い決断力が必要です。ときには妥協することの勇気が正解を導き出すこともあるのです。外観と構造の折り合いをどうするか、ここが原寸模型の難しいところだと思います。

(従台車の完成度=70%)

主連棒。軸間3150mm。

ボイラーケーシング、曲面パネルの取り付試験。白と青のパネルを交互に装着して、縦横のゆがみをチャック。また、曲面の局率半径の経年変化をチェック。1年経ってもまったく変化していませんでした。

2017.09.13

つづく